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ちゃりんこをかっ飛ばす。
取材の依頼を受け10時にお店に伺う約束をしていたのに、いつもの如く寝坊してしまった・・・お店の入っているビルに到着したのがほぼオンタイムの10時前。
今日は今年の1月にオープンしたセレクトショップ『LE DICO(ル ディコ)』さんを取材したので紹介させていただこう。
セレクトショップ『LE DICO(ル ディコ)』を取材
1階のお店看板を見て2階に向かう。ここは娘が2年前に幼児教室で通っていたことがあるため勝手が分かっていた。普通のマンションぽい雰囲気の中、お店の看板を見ただけで2階に向かう人がどれだけいるのか?
お店の場所はサンセットアレイ通りにあり、自由が丘雑貨店でも老舗である『私の部屋』のビルにあることは地の利を活かせる部分でもある。2階へ向かうハードルをどう下げれば良いか・・・
そんなことを思いながら時計を見ると9時59分、やばい。
エレベーターで2階に上がり、ちょうど10時ピッタリ。とりあえず約束の時間に間に合ってホッとした・・・
扉をノックすると、開店準備をしている女性が笑顔で店内に通してくれた。この人が私にコンタクトしてきたLE DICO(以降ディコ)オーナーのKさんだった。
とりあえず自己紹介を済ませ、お話を伺うことにした。
はじめにディコを立ち上げるに至った経緯について色々と伺っていく。Kさんは、元々は元町のセレクトショップで働いていたが一念発起し独立、同じ会社で働いていたHさんとともにディコを立ち上げた。
立ち上げてから13年間ずっと元町でお店を続け、今年で14年目を迎えるとのこと、アパレルショップとしては老舗と呼ばれる部類に入るだろう。
これだけ流行の移り変わりの激しいアパレルの世界で13年もの間営業を続けるのは至難の業だ。特にここ5年位はファストファッションなどの激流が押し寄せる状況の中、普通に営業しているだけではここまで持たない。
突出した『何か』があるんだろう、気になる部分はそこにある。
14年目を迎える今年、お店は心機一転して場所を変え、新天地に選んだのが自由が丘だった。
軽く私の略歴を・・・
私は個人的に洋服が好きで、好きで、好きで・・・
お前の話なぞ特に興味もへったくれもない。なんて言われそうだが、まずは私が過ごした若者時代と今がどう違うのかを比較することが出来ると思うので少しだけお付き合いいただきたい。
そう中高生で火がついてから結婚するまで、ファッションにかける費用は月の収入の7・8割を占めるほどだった。当時はインターネットなんて存在しないから情報なんて雑誌で仕入れるか、自分の足で探し出すしかなかった時代である。
17歳の時に当時ケーブルTVに加入していた私は、たまたまスペースシャワーTVという番組でMCが着けていた『クロムハーツ』というブランドとその商品だろうウォッチケースを知り、どうしてもそれが欲しかった。
http://ivorytower.at.webry.info/
でも今の時代のようにGoogleさんに聞けば何でも回答が返ってくる時代じゃない。クロムハーツというキーワードからまずはひたすら家にある雑誌をめくり調べる。当時、月に5冊はファッション系の雑誌を買っていた。
その中からUA(ユナイテッドアローズ)で取り扱いしていることが分かり、原宿の本店に行って実際に商品を確認するみたいな流れだ。当時クロムハーツの正規代理店はUAしかなかった時代。
値段も分からないからとりあえず有り金の5万円を握りしめ、お店に向かう。確かにお店のショーケースにはTVで見たものとほぼ同じものが置かれているが、あくまでウォッチケースなので中身は無い・・・
価格は正確には憶えていないが、欲しかった単車が一台買えるくらいの金額だったことだけは記憶に残っている。セレクトショップなんて行ったことのない私にとって当時はかなりのカルチャーショックだった。
ユニクロがフリースで人気が出てきたのが18歳くらいだから、今から20年以上も前の話になる。フリースで人気が出たユニクロも今のようなファッション性は皆無でただの安いフリース屋みたいなもんだった。
それよりちょい前は裏原宿なんて言葉が始まったくらいの時で、でも私は裏原よりもモードなものが好きだったからダークビッケンバーグや、ラフ・シモンズ、今はデニムで有名になったディースクエアードなんかを良く買っていた。
こんなブーツ履いてるがゆえ、周りの友人からは変態扱いされていたが、そんなことはどうでも良かった。他人と同じものを着たくなかったということもあるが、当時セレクトショップにセレクトされたブランド自体に物凄い魅力を感じていたから。
値札がいくらだろうが関係なかった。欲しい時はひたすらバイトして、お昼はおにぎり1個で耐えてお金を貯めた。要はカッコ良い服が着れれば何もいらなかったわけだ。
そんな時代だからこそ当時のセレクトショップは今のセレクトショップとは違い、『セレクトショップ』らしい働きを担っていたものだ。
書いていて混乱するような言い方になってしまったが、今のセレクトショップは昔とは大幅に変わってしまった。
今と昔で何が変わったのかと言えば、セレクトショップと言っても基本的に自社PB商品の取り扱いが9割位になり、あまり海外でセレクトされた面白い商品が少なくなってしまったように感じる。
セレクトショップ自体が一つのブランドになってしまったようなものだね。
独自セレクトのブランド
お店に来る前にHPなどを見させてもらったが、私が知っているブランドは1つだけ(OSKLEN)。
結婚してからというもの、私も洋服への興味が薄れたわけではないが優先順位は確実に低くなった。こども2人のことを優先させて洋服は適当に見栄えが良いものだけセレクトするようになった。
ビジネスとカジュアルの両方使える無難なものを買うようになった。ほとんどがセレクトショップオリジナルを着るようになり、『ちょっと人と違うもの』という観点自体が頭の片隅に追いやられ忘却の彼方へ行ってしまっていた。
そんな忘れていた昔の気持ちを思い起こさせてくれるような気がした。
ディコの数ある取扱いブランドの中から、私が気になったブランドを3つ紹介させていただこう。
The Fifth Label(ザフィフスレーベル)
新進気鋭のブランドなのか、特に気になったのはThe Fifth Labelだ。
基本的に個人的な趣味によるところも大きいが、ある程度ストリートな匂いのするアイテムが好みの私にとっては一目でビビッときたもの。
オーストラリア発のブランドらしく、テーマは『ストリートファッションとハイファッションの融合』とのこと。
細かい仕事が良くされてると感じたのが、しっかりした縫製とカッティングの面白さ。
それでいて価格は5,000円以下と非常にコスパ感が高いものとなっている。サーマルは保温性も高く、これからの時期にヘビロテ確定のアイテムか。
いくらデザイン性が優れていても、品質がダメだと話にならない。1回着て洗ったらビヨンビヨンになってしまうものなど、昔よりも今の方がそういった部分を心配してしまう。
オーバーサイジングなコートは、サイドにシームが無いパターンのもの。こんなデザインはセレクトショップに行かないと見つからない典型的なパターンの一つだ。
ノッチドラペルの位置が下目にあり、それがクラシカルなんだけど今の雰囲気に合ってるんだろう。
フィフスレーベルの良さは、デザイン・品質・コストの3つのバランスが取れているところだと思う。比較的どの年代の女性にもおすすめ出来るね。
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ippei takei(イッペイ タケイ)
思うところあって縫製工場の裁断工としてキャリアを始める。
パターン・縫製などをすべて自ら行うパンツの受注生産を経て2000年にレディスウェア「ippei takei」をスタートさせる。その基本コンセプトは、男性のワードローブを女性に向けて開放すること。
by ippei takei
イッペイ タケイというブランドも知らなかったが、見せてもらった中でも魅力あるものの一つだった。
パンツの良さには定評がある。
ホームページを調べるに縫製工場の裁断工からキャリアをスタートさせているのも独特だし。
Kさん曰く、デザイナーだけど自分のパターンが引ける人は少ないらしい。縫製工場出身のパターンナーは非常に力があるという。
自分でイメージするデザインのものを、そのままパターンまで引けることが理由の一つだ。
でも私はこの辺のユルシルエットのものを着たことがあまりない。というのも、私の体型に最も似合わないファッションなんだよね・・・
http://www.store.palm-jpn.com/
タイトシルエットよりもユルいシルエットのものを着こなす方が難しい。
少し前のスキニーブームから、今は大分ゆるいシルエットのものを取り入れたものが増えてきた。個人的にはこんな恰好でまとめてみたいと思うことはある。
が、このスタイルが似合うのは男性よりもやはり女性なんだろう。HPに載ってるモデルのように着こなせたらメチャモテるだろうな。でも、実際に街でこのスタイルの女性で似合っていると思う人を見たことがない。
着こなすのが難しい分、適当に合わせずに相談しながらスタイリングしていくことが失敗しないためには必要だ。
そういった部分を親身になって相談に乗ってくれるお店で購入することが、自分がさらにオシャレになれる要素の一つなんだけどなー。
Miki MIALY(ミキミアリ)
最後に気になったのは、パリにも自身のオンリーショップを持つ実力派日本人デザイナーが作るMiki MIALY(ミキミアリ)。
不勉強ながら、お店に来てみて知るブランドだったんだけど素材の良さや、ディティールが本当にキレイだった。
大人の女性が着ることで、いや大人の女性こそこのような洋服を身につけてほしいと思うデザインのものが多い。
この辺のブランドは価格帯が高すぎるというほどでもなく、クオリティはきちんとしているものばかり。
Miki MIALYは1992年にブランド設立して、2001年にパリにオンリーショップを持つくらいにまでなった実力派なのは言うまでもないのだが、普通は売れてくると素材や品質が下がることがほとんどだ。
Kさん曰く、ミキミアリに関してはブランド創設当初よりクオリティを下げずにやっているデザイナーの一人だそう。
あまり奇をてらったものではなく、落ち着きのある普通に着れるものの中でもちょっと違いがあるところをチョイスしているなーというのが良く分かった。
買物難民とは?
CINZIA ARAIA(シンツィア アライア)というブランドのレディースダブルジップブーツ
これが革の質感・デザインともに素晴らしく、メンズがあったら欲しいと思う出来のものだった。
価格帯は7・8万円とそれなりのプライスにはなってしまうが、インヒール仕様なので履いた時に少し背が高く見えるところや、ソールにすでにギザギザのゴム処理がされていることで雨でも履けるようになっている。
この辺に、ブランドのさりげない心遣いを感じることができる。
ディコに来るお客さんが良く言う言葉の中に『欲しい服が見つからない』というものがあるという。
新宿・青山・銀座など主要都市デパートやセレクトショップを除いても、買いたいものが見つからない。
いったいどういうことなのか?
おそらく潜在的に良い服を探している人は多い。でもセレクトショップの機能が果たされなくなってきているがゆえに着たい服が置いていないという現象が起こる。
これは私もそうなのかもしれないが、昔好きで通っていたお店が不況の煽りを喰らって無くなっていたり、好きだったブランドの品質が低下したり、セレクトされるものが自分好みで無くなった、など外部要因的な理由もあるだろう。
ファストファッション全盛時代ではあるが、昔からの洋服好きはそこにはいかない。私なんかはそのブランドのストーリーを知りたい人間なので、どんなバックグラウンドで生まれたものなのかが気になったりする。
その価値観とプロダクトの品質が伴った時にお金を払うのだ。
Kさんも仰っていたが、みんな昔は良い服を着ていたからその感触を憶えていると言っていた。百貨店はハイブランドで数十万、実用性がないし買えない。かといって、中間価格帯に良いものがないわけでは無い。良いものをうまく紹介出来てないのが現実なんだろう。
ディコに来るお客さんはブランドの特徴や素材感などをKさんとHさんに説明してもらい、その辺を納得して購入していくのだと思う。
元町時代のお客さんも引き続きお店に来てくれるようで、その辺はKさんとこの日はお話出来なかったHさんのセレクト眼によるところが大きいのかもしれない。
とんがっては無いにしろ、コーディネートが難しいアイテムもあるからその辺を2人に相談出来るのも大きな理由だと感じた。
難しいのは、誰もが知っているブランドを取り扱っていない分集客キーワードが少ないことだけかな・・・
まとめ
SABREと書いてセイバーと読むみたい。デザインだけではなく、ジャパンフィットそれは日本人の骨格に合わせた作りだからこそ人気があるんだと思う。
直接海外に買い付けに行くことも多いが、毎年日本の展示会に来てくれるようなところもあるので今はケースバイケースで動いているとのこと。
ドイツやブラジルなどのちょっと知られていないけど良いブランドなどを取り扱っていたり、受注生産に近いものだから点数は少ないけどビビッと来る人は多いんじゃないかな。
特に昔から服が好きな35歳~50歳くらいのひとは、目利きがてら覗いてみると昔の新鮮な気持ちが蘇ってくると思うよ。
ディコをスタートして14年目を迎えるなか、お店を継続できている『何か』の理由が見えてきたような気がする。
バイイングした人間がそのまま販売まで行っているので、すべてを把握している。どの商品について聞いてみても何でも答えてくれるのだ。
この辺は効率の悪さでもあるんだけど、それがお客さんの信頼に繋がる大きな要因の一つなのは確実。
万が一お気に入りの洋服がほつれてしまったり、ダメージを負ってしまった時もアフターしてくれるとのこと。売って終わりにしないトータルケアは中々できるお店も少なくなってきた。
箱は小さいけどお店自体は面白い、洋服好きを自負している人は一度立ち寄ってみることをおすすめする。
きっと新しい価値観に触れることが出来ると思うよ。
アクセス
住所:〒152-0035
東京都目黒区自由が丘2丁目9-4
2F
電話:03-5731-0140
営業時間:12:00~20:00(土日11:00~19:00)
定休日:水曜日
業態:セレクトショップ
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